〔特集〕読者限定 特別ランチ会への誘い 食のワンダーランド日本見聞録(鹿児島編) 後編 イタリア人のアイデンティティを核として、伝統的なイタリア料理に日本の食材を用いて独創性あふれるコンテンポラリーな表現を探求してきた「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラトウキョウ」のヘッドシェフ、アントニオ・イアコヴィエッロさんが、日本の未知なる食材や食文化に触れる旅に出かけました。旅から生まれた1日限りのランチ会も開催!
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郷土の食材探訪 薩摩の「色」に魅せられて
〔旅するシェフ〕アントニオ・イアコヴィエッロさんイタリア・カンパーニア州出身。2021年に来日し、同年10月「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」ヘッドシェフに就任。「ミシュランガイド東京 2023」で1つ星、「50 Top Italy(世界のベストイタリアンレストラン)2023」で3位および「シェフ・オブ・ザ・イヤー」(ダミコ賞)に輝く。
「SHIROYAMA HOTEL kagoshima」から桜島を望む。「ナポリのヴェズヴィオ山とそっくり」とアントニオさん。
黒酢/坂元醸造
太陽の恵みと微生物がもたらす壺造りの黒酢
蔵付きの乳酸菌と酵母菌、壺付きの酢酸菌によって発酵、熟成させる黒酢。自然の微生物だけで仕込む酢は世界でも珍しい。
霧島市福山町は黒酢の産地。錦江湾に面した同地は、温暖な気候、豊富な米、上質な地下水、そして薩摩焼の壺が手に入ることから、200年以上昔より壺で発酵熟成させる酢造が行われてきました。全盛期には24軒もの生産者がいましたが、戦時の米統制で激減。
「坂元醸造」では先代が国立病院に隣接して薬局を開業し、国立病院の患者に米酢の飲用をすすめたところ大変好評となり、正式に黒酢と名づけ、伝統製法を守っています。熟成を経るに従い、琥珀色がより深まり、まろやかになる黒酢。
桜島を背景に陶器の壺がずらりと並 ぶ“壺畑”で黒酢の原液を試飲。
1年ものと3年ものの原液を味わったアントニオさんは、「バルサミコ酢と共通点もありながら、味わいは全く異なる黒酢の応用力を試してみたい」と熱心に試飲を繰り返しました。
坂元のくろず「壺畑」
情報館&レストラン
住所:鹿児島県霧島市福山町福山3075
TEL:0995(54)7200
黒豚/沖田黒豚牧場
天空の放牧場で純血種を守る
しゃぶしゃぶで、黒豚の甘み、さっぱりとした脂をシンプルに味わう。
黒豚は、鹿児島の名産品の代表格。元来は沖縄の島豚と在来種の掛け合わせで、明治時代にイギリスのバークシャー種の血統が加わってより肉質の優れた「鹿児島黒豚」に改良されました。生育に時間がかかり、産出数も少ないため、一時は白豚への転換やアメリカ系バークシャー種の血統を取り入れる生産者も増える中、「沖田黒豚牧場」ではかたくなに純血の鹿児島黒豚を守り続けてきました。
バラではなくもも肉で作る角煮。野菜と共に焼酎で下ゆでしたもも肉はとろけるように柔らかい。
牧場併設レストランで腕をふるう3代目の沖田大作さんによると、魅力は真っ白な脂。きめが細かく締まった食感で脂というより白身という感覚だといいます。
黒豚たちが走り回る放牧場の見晴台に上ってアントニオさんと沖田さんが豚談義。
「放牧で大切に育てられた黒豚は臭みがなく、味わいは驚くほど繊細」とアントニオさんも賛辞を惜しみません。
沖田黒豚牧場 牧場レストラン「和~のどか~」住所:鹿児島県伊佐市大口田代1558-66
TEL:0995(28)2098 完全予約制